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「雪割草シリーズ」
待雪草

〈04〉 意地

 ← 〈04〉 真実 →〈05〉 求婚
数日後、早苗は用事があった帰り道、助三郎の妹の千鶴と彼女の一番の友達、香代とばったり会った。
舞の稽古では先輩後輩の間柄、仲が良い。

「早苗さん、今日空いてます?」

 と千鶴。

「香代と料理作ろうと思ってるんですが、早苗さんもどうかなって。ね?」

「はい。ぜひ」

 後輩二人の誘いに、早苗は興味を示した。

「なに作るの?」

「煮物でもと思ってるんですが……」

 すると、早苗は思案顔。

「煮物ねぇ…… 難しいわよね。この前焦がして怒られたの」

「そうなんですか?」

「水の加減が難しくて……」

 三人で立ち話しているところへ、ある女の子がやってきた。
それは早苗の天敵、弥生。

 厄介なことに、彼女は仲間の娘も引き連れていた。
 早苗は彼女を無視しようと決めたが、彼女は冷たい声をかけてきた。

「早苗。ちょっといい?」

「なに?」

 つっけんどんにそういうと、弥生は早苗を睨んだ。

「貴女、佐々木さまに入れ知恵したんでしょ?」

 突拍子もないその言葉に早苗は驚いた。

「なんのこと?」

 すると、弥生の取り巻きから声が上がった。

「この子、佐々木さまに見合いを断られたのよ」

「そうよ。何の理由もなしにね!」

 それは寝耳に水だった。
助三郎が見合いを断った。
何故かそれが自分のせいなっている。
 意味がわからない早苗は素直に聞いた。

「なんで?」

 すると、弥生は早苗に食って掛かった。

「しらっばっくれないでよ! いやな子ね!」

 理不尽な一方的な言いがかり。
 早苗はイラッとした。

「だってそんな話知らないもん! それに、なんでお見合い断られたのをわたしのせいにするの!?」

 すると、弥生は女の子特有の陰湿な反撃をした。
取り巻きの女の子と一緒に、これ見よがしに早苗の嫌味を言った。

「……佐々木さまと幼馴染だからって、頭に乗っちゃって」

「そうよ。家格が釣り合うわけないのにね」

 この行為に香代が反撃をした。
彼女はおとなしい性格。しかし、彼女は行動に出た。

「弥生さん。やめてください! 早苗さんはそんな方じゃありません!」

 すると、弥生は彼女を鼻で笑った。
そして、見下した表情ではき捨てた。

「香代、黙ってなさい。禄高が低い家の娘のくせに、生意気よ」

 香代は返す言葉がなくなった。
そして、顔を伏せた。
 かわいそうな彼女を、千鶴が助けた。

「香代、気にしないの。あんな子放っておけばいい」

「ちょっと、あんな子ってなによ?」

 千鶴は強かった。
性格も、家柄も。
 それを武器にして、彼女は親友と先輩を守りに入った。

「弥生さん、兄が貴女との見合いを断った理由、教えてあげましょうか?」

「なに? 教えなさいよ」

 千鶴は笑みを浮かべてズバッと言った。

「貴女のその性格が悪いからに決まってるでしょう? お分かりになりませんか?」

 その言葉を聞いた弥生は怒りで震えた。
しかし、一方で早苗は千鶴に忠告した。

「……千鶴ちゃん。いくらなんでもそういうこと言ったらダメよ」

 それを弥生がキッと睨んだ。

「いい子ぶって。そういうとこが大嫌いなの!」

 千鶴はさらに弥生を攻めた。

「弥生さん。貴女、本当に性格が悪いですね。わたしは貴女みたいな方、義姉上とは死んでも呼べませんから!」

「なによ!」

「千鶴ちゃん。もういいから。黙って!」

 弥生は怒り、千鶴は彼女を鼻で笑い、早苗は焦った。
千鶴に勝つことは無理と見た弥生は、早苗に刃を向けた。
 
「妹まで手名づけて、ほんと性質の悪い女ね!」

 性根の腐った弥生。
早苗は腹立たしさを覚えた。

 家格や見目など、もうどうでもいい。
 目の前の弥生をぎゃふんといわせたくてたまらなくなった。

 彼女は深呼吸すると覚悟を決めた。
 鋭いまなざしで弥生を見据えた。
 すると彼女は少し動揺し始めた。

「……なによ? やる気?」

 早苗は、彼女を得意の柔術で投げ飛ばすことを決めた。

「弥生! 文句あるなら父上にでも泣きつきなさい! いいわね!」


 そこへ男がやってきた。
 この騒動の原因となった男。

 暢気に腕組みしながら、

「お、千鶴。皆そろって何やってんだ?」

 興味深げにそう妹に伺うと、千鶴は彼とは対照的に焦った様子で彼にすがった。

「兄上! 早苗さんを助けてください!」

「え? あ、なんだ? 相撲でもするのか?」

 まったく緊張感のない返事に、千鶴は怒った。

「違います! ケンカです! 早く止めて下さい!」

 やっと何が起こっているのか察した彼は、女二人の中に割って入った。

「おい、やめろ! 女同士で何やってる!?」

 弥生は男が助三郎とわかるや否や、別人のようにしおらしくなった。

「あっ…… 佐々木さま」

 そういう態度をとる弥生に、早苗は余計に腹立たしさを覚えた。
 しかし、弥生は自分を守るために彼女から逃げた。

「早苗さん、ごきげんよう。佐々木さま。さようなら」

 可愛い子ぶって笑みを浮かべながら去っていく彼女を、早苗は睨みつけた。
いつか目に物見せてくれようと、心に誓った。


 一息つくと、助三郎は早苗に聞いた。

「いったいなにやってんだ?」

「ふん! しらない!」
 
 そっぽを向く彼女をなだめた

「なぁ、そんなに怒るなよ。……変な顔になってるぞ」

 しかし、余計なことを言ってしまった。
 
「いつも変なんでしょ!」

 早苗は余計に腹を立て、助三郎に背を向けた。
 それを見た千鶴は兄を叱った。
 
「兄上!どうしてそうやってふざけるんですか!?」

 しかし彼は妹の話は聞かず、香代に一部始終を聞いていた。
 
「……へぇ、あの子を投げようとしてたのか?」

 ニヤッとした彼にむっとなった早苗は、香代にまで怒鳴った。
 
「香代ちゃん! 言わないでよ!」

「ごめんなさい…。」

 しゅんとした彼女を、千鶴が慰めた。
しかし、早苗と助三郎の言い合いは止まらない。
 
「投げ飛ばす所、見たかったな」

「そういうこと言うと、貴方を投げ飛ばすから!」

「無理だ。お前の体重なんかよりずっと俺の方が重い。クチャッと潰れる」

「ふん!」

 再びそっぽを向いてしまった早苗だったが、助三郎は会話を続けた。
 
「……でケンカの原因は?」

 早苗は黙ったまま。
 
「なんだ? ……言いたくないのか?」

 しかし、早苗はぼそりと言った。
 
「……助三郎さまのせい」

「は? なんで?」

 何故喧嘩が自分のせいなのか。
助三郎は驚いた。

「……弥生とのお見合い、断ったんでしょ?」

「あぁ…… あれとの見合いの話か? それで、あっちはなんだって?」

「……わたしが入れ知恵したから、助三郎さまが断ったんだって言ってた」

 話を聞いた助三郎は毒づいた。
 
「あいつ、やっぱりバカだな」

「へ? どういうこと?」

「わからないか? あいつ頭悪いだろ?」

「言われてみれば……」

 語彙が貧相。
父親の身分をカサに着て、言いたい放題わがまましか言ってない。

「知識が無さすぎて、あいつとは話が出来ん。父親が甘やかしたんだろうな、あれの弟もバカなんだ」

 バカだの頭が悪いだの並べる彼。
早苗はふと疑問に思ったことを口にした。

「……頭がいい女って、嫌われるんじゃないの?」

「そんなことない。馬鹿なやつの方が俺はイヤだ」

「へぇ……」

「それに、あんな男に色目使ってたぶらかす女は嫁にできん。母上がぶちギレてよしだ。千鶴、お前もイヤだろあんな女」

 彼は妹に合意を求めた。
彼女は彼と同意見。

「はい。あんなのが家に来たら、私は家出します」

 二人の意見を聞いた早苗は彼に言った。

「そうか…… じゃあ、誰にするの? お嫁さん」

「え? 嫁? それは……」

 迷う様子の助三郎。
早苗はそれを見て思った。
 相手はたくさんいる。自分は、到底無理だと。

 沈む気持ちを見せないよう、早苗は明るくこう言った。
 
「頑張ってね! あ、そうだ! どっちが先に相手が決まるか勝負しましょ!」

「は? 勝負? なんで?」

 早苗は彼を挑発した。
 
「あっ。もしかして、自信無いの?」

 彼はその挑発に乗ってしまった。

「……そんなことない! 俺が先に決まってるからな!」

「さぁ、どっちが先でしょう? 勝負よ! あ、香代ちゃん、今日のお料理はごめんね。また誘ってね」

 早苗は去りがてら、香代に謝った。
 
「はい。また今度」





 その後、佐々木家の兄妹は久し振りに一緒に帰宅することになった。
千鶴は兄の気持をよく知っていた。
 
「兄上、どうしてはっきり言わないんです? 早くしないと手遅れになりますよ」

 年頃の女。見合い話など山とある。
しかし、兄から返ってきたのは弱弱しい言葉。

「……怖い」

「え? どうして?」

「……俺の、一方通行で玉砕したら、立ち直れなさそうで、怖い」

 
 本当の気持ちを伝えられない兄に少し呆れながらも、千鶴は兄に強く言った。
 
「そんなの、わからないでしょう? もし、今諦めて四五十年経った後に、『本当は好きだった』なんて言われた方がよっぽど悲しいでしょう?」

「そう、かもな……」

 すこし前向きになった様子の兄に、彼女は念を押した。
 
「兄上、頑張ってください。私は早苗さんに義姉上になってもらいたいんです!」

「……お前はいいのか? 俺が早苗を嫁にもらっても?」

「はい。大賛成です。とにかく、兄上がすべきことは、はっきり言いに行くことです!」

 きっぱりズバッという彼女はある人によく似ていた。
 
「……お前、母上みたいだな」

 ニヤッと笑った兄に、千鶴は怒った。
 
「余計なお世話です! なんで無駄口ならいくらでも叩けるのに、早苗さんにはまともなこと言えないんですか!? もうわけがわからない!」

「はいはい、悪かったな!」

 がみがみ叱りつける妹に圧されながら、彼は家路を歩いて行った。
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