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「雪割草シリーズ」
待雪草

〈08〉 一抹の不安

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昨晩から悩みっぱなしだった早苗は、父が部屋に来るまで、何も知らなかった。

「早苗。いるか?」

「なんですか?」

「用がある。入ってもいいか?」

「はい…。」



「御用件は?」

「助三郎が来た。」

「え?」

「お前に嫁に来てほしいそうだ。どうだ?」

本気だったんだ。
からかってたんじゃなかった。

「どうだって言われても…。父上は?」

「わしは構わん。許した。あとはお前の意思だ。」

「……。」

「家柄は考えるなとのことだ。世間体抜きに考えなさい。」


それならもう答えは一つ。

「…謹んでお受けしますとお伝えください。」

「よし。わかった。今後の縁談持ち込みは平太郎のみに切り替えよう。」

「もう、見合いはしなくてもいいんですか?」

「そうだ。安心しろ。」

ちょうどその時、空いたままの障子から兄の平太郎が覗きこんだ。

「よう、早苗、寝込んでないようだな!」

「兄上!覗かないでください!もう仕事の時間でしょう。早く出仕しないと!」

「可愛くないな。せっかく優しい兄が気にかけてやったのに。」

「どこが優しいんです?」

口喧嘩を始めた兄妹をほかり、又兵衛は部屋を出て行った。
息子とすれ違いざまにかつを入れた。

「平太郎、妹の方が早かったな!お前ももっと真剣にやれ!」

「は?何をですか?」

「見合いだ、見合い!はっはっは!」

笑いながら去って行った。

「…早くできたら苦労しないよ。で、早苗、俺の義弟になるやつは誰だ?」

「…助三郎さま。」

「あいつが!?まぁ、気心が知れたやつの方がいいな。」

「そうですか?」

小さい頃は皆でよく一緒になって遊んだ。
助三郎が異常に早い時期に元服し、出仕を始めたせいで遊べなくはなったが、今でも付き合いはあった。

「早苗、腹減ったろ?朝飯とってあるからちゃんと食えよ。」

「はい…。」
少しは心配してくれるんだ。

「でもな、がっつくんじゃないぞ。太っちまうからな。」

「やっぱり、兄上はそんなんだからモテないんですよ!」

「知るか!遅れるからもう行く!」







次の日、友達の奈実、春恵、後輩の千鶴、香代と皆で外出をする約束していた。

待ち合わせ場所に一足早く来ていた皆は思い思いにおしゃべりしていた。

先日見合いをした奈実に春恵が聞いた。
「どうだった?見合いは?」

「相手の方、悪い人じゃなかったんだけど、緊張しすぎてて、上手くお話しできなかったの。どうなるかまだわかんない。」

「そうなの?結構見合いって面倒ね。」

「ねぇ、わたしのことより、佐々木家の縁談の持ち込みは千鶴ちゃんあてのだけになったって聞いた?」

「そうなの!?お嫁さん決まったの?」

「そうでしょ?見合いは今後しないんだから。」

「そうだ!…千鶴ちゃん、知ってるわよね?」

「はい。…あ、噂をすれば来ましたよ。義姉上!おはようございます!」

噂の主の妹が義姉と呼んだ相手を見て、二人は驚いた。


「え!?早苗!?」

「おはよう!二人とも、なに口開けてるの?」

早苗はいきなり、二人に木陰に引きずり込まれた。

「なにするの!?」

「…言いなさい、嫁に行くの?」

「へ?」

「…いつの間に申し込まれたの?」

「なんの話?」

「佐々木様と結婚するんでしょ!?」

「あぁ。そのこと?そうなったけど。」

「なによ!教えてくれたっていいじゃない!水臭いわね!」

「だって、今日まで家から一歩も外に出てないもん!」

「まぁいいわ。すごいじゃないの!やっぱり幼馴染みね!」

「え?」

「憧れるわ!『ずっと好きだった。結婚してくれ!』とか言われたの?」

「『好きだ、俺の妻になってくれ。』とか?」

友達二人は勝手に自分の理想を当てはめはじめた。
そんなんじゃないのに。

「……。」

「…どうだったの?なんて言われたの?」

「『俺と結婚してくれるか?』だけ…。」

「で、返事を早苗がして、抱き締められたってわけね?」

「チュってした?」

「ううん。なんにも…。走って帰っちゃった。」

「それから?」
興味津津で追求してきた。

「昨日、父上に了承もらいに来たけど、わたしは一度も会ってない。」

「なんなの、それ。全然魅力的じゃないわね。」

「佐々木さまモテるから、すごいこと言ったりやったりするかと思ったのに。」

「……。」

「あっ、ごめん。気にしないで。」

「そうよ。申込みがすべてじゃないから。」

雰囲気が悪くなったので、予定していた買い物へ行くことにした。
しかし、早苗の気分は変わらなかった。

「…理由が知りたいの。」
と、思っていたことを呟いた。

「何の?」

「なんで、わたしと結婚するのか。」

「どうして?」

「家柄はうちのほうが低い。わたし見た目可愛くもないし、きれいでもない。性格も趣味も男みたい。こんな女、どこがいいの?」

「…早苗。」

「わからないの…。」

傍で聞いていた千鶴は、早苗が心配になり、声をかけた。

「義姉上、兄上から何も言われなかったんですか?」

「うん。」

「…わかりました。愚兄をけしかけるので、待っててくださいね。」

「しなくてもいいからそんなこと!」

「なんでです?不安でしょう?」

「…でも、そのうちわかると思うから。今、無理してまでも聞きたくない。…様子見てみるから。」

「そうですか…。」


幸せなはずの結婚申込みが、早苗の心に一抹の不安を残した。
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