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「雪割草シリーズ」
待雪草

〈10〉 期待と不安

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早苗は母から頼まれ、近所に遣いに行った。

千鶴と出くわし、おしゃべりした。

「兄上はどうです?」

「…なんにも。」

「あのバカ兄上。ただじゃおかない!本当にけしかけるので、待っててください!」

「やらなくていい。無理して聞きたくないから。」

「義姉上はそれでいいんですか?」

「…うん。」

そこに、天敵が現れた。
「あら、早苗。佐々木さまの奥方になるんですってね。」

「だから?」

「家柄が釣り合わないのによくなれるわね。色仕掛けか、賄賂か何かしたんじゃないの?」

人を小馬鹿にした眼で、鼻にかかる言い方をして来たせいで、早苗はぶちぎれた。
怒鳴り返そうと息を吸い込んだとたん、隣の千鶴が先に声を荒げた。

「あんたみたいな傲慢、誰ももらってくれないわよ!行き遅れになる前に、父上に頼んで奥女中にしてもらうか、出家でもして尼になった方がましね!
まぁ、上司の御女中にも、仏様にも嫌われるでしょうね、あんたみたいな性悪女!」

すさまじい暴言で懲りたのか、二人を一睨みすると、早苗の大嫌いな弥生は走り去って行った。

「千鶴ちゃん、すごい…。」

「もっといっぱい言いたいことあったんですけどね。とっておきます。では、義姉上、さようなら。」

「さようなら。」


用事を終えた帰り道、すでに夕方になっていた。

結局今日も助三郎さまと会えず仕舞いか…。
『俺と、結婚してくれるか?』
って言われてから一度も会ってない。
わたしを避けてるのかな?
あの人、父上には承諾しに来たけど、やっぱり本気じゃなかったのかな…。

とぼとぼ歩いていると、後ろから人の気配がした。

「夕方に一人で危ないぞ。」

「……。」
助三郎だった。

「どうした?人を化け物を見るような眼で見て。」

「…なんでもない。」

「…これから帰りか?」

「うん。」

「俺も帰りだ。」

「そう…。」

一緒に歩き出したが、何も言わない。
黙ったまま。
自分から何か言おうにも良い言葉が見つからない。
結局、話すことなく家についてしまった。

「では、助三郎さま。さようなら。」

「あっ。あぁ…。」

何も変わらない。
前と一緒。もしかしたら、前より悪いかも…。
何もしゃべらない。会話にならない。
はぁ…。やっぱり、『はい』なんて言わなきゃ良かったかな?

早苗の悩みはより深くなってしまった。




一方助三郎は、自分のふがいなさに打ちひしがれていた。
決心して言おうとしたのに。
気合いを入れてきたのに。
何も言えなかった。
俺ってバカだな…。
明日こそ、言おう。
はっきり気持ちを伝えよう。


そう、決心したが助三郎はそれからも全く言えなかった。
しかし、普段通りの会話はできるようになった。
軽い口ゲンカもいつものようにするようになった。

まだ、良いかな?
もうちょっと先でも、いいかもな。
祝言まだ日取り決まってないし。
もうちょっと後にしよう。
早苗も気にしてないみたいだし。

鈍感な助三郎は一人、早合点をしてしまった。
それが余計早苗を不安にさせた。

佐々木家と橋野家の婚姻関係は認知され、助三郎を取り巻く女の子はいなくなった。
そのおかげもあってか、一緒に過ごせる時間は前よりも増えた。

しかし、関係は変わらなかった。

手を握ってもくれない。
『好きだ』とも言ってくれない。
ましてや、抱きしめてもくれない。
二人の距離が全然縮まっていない。


早苗は奈実と春恵に悩みを打ち明けた。
「…何にも言わないし、してくれないの。どうしよう。」

「早苗、落ち込まなくてもいいわ。祝言までは一切手を出さない人もいるから。」

「そうそう。逆に変な事されたらいやでしょ?」

「なに?変なことって?」

「わからない?」

「うん。」

「…春恵、これは母上が教えることよ。やめとこ。」

「…そうね。上手く説明できないし。」

「へ?」

「とにかく、落ち込んでても仕方ないの!」

「そう?」

「気晴らしに買い物でも行きましょ!ね?」

「そうよ、おいしいもの食べて、発散させよ!」

「わかった。」


少し落ち着いた早苗は、待ってみることにした。
いつか『好きだ』って言ってくれるかも。
抱きしめてくれるかも。
それまで、焦らずまってみよう。



江戸から文が届き、助三郎が光圀の供をし、旅に出る二月前のことだった。
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