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「雪割草シリーズ」
翁草

〈02〉怪しい縁組

 ←〈01〉おにいちゃん →〈03〉作戦
「……皆さん。お初ちゃんが落ち着くまでしばらく外してくれますか?」

 なす術もない男たち。その場を去ることにした。
しかし、いつまで掛かるか分からない。
 彼らは茶店へ場所を移した。

「大丈夫です? このまま帰って?」

 団子を頬張りながら、新助が聞いた。
横で助三郎は呆れていた。

「よく平気で食えるなお前は…… 怒られませんか?」

「間違いなく、番頭さんに怒られます……」

 助三郎は、再び勘ぐり出した。
大名の肝いりでありながら、お店の主人ではなく番頭が牛耳る見合い。
怪しい……
 そして、それ以上に二人の関係も気掛かりだった。
 しかし、初対面である。ずけずけ聞けるわけが無い。

「徳さん、何かあったらお力になりますよ」

「ありがとうございます……」

 新助も助け船を出した。

「そうですよ。この方、頼りにすべきですよ」

「助さんは、いったい……」

「申し遅れました。ちりめん問屋の手代です」

「同業でしたか。これは心強い」





「新助さん、どうでしたか?」

 日が暮れかかったころ、様子を観に行った新助は
待ちかまえていた徳兵衛に穏やかに告げた。

「お初ちゃんは、お孝ちゃんとおいらがお店まで送っていきます。
徳さんは、しばらくして後から来てください。
探したけど見つからなかった体で」

「すみません……」

「助さん、あとは大丈夫です。そろそろ帰らないと……」

 早苗に怒られる。
 助三郎は焦った。これ以上機嫌を損ねてはまずい。

「では、徳さんお気をつけて。せっかくお知り合いになれたんだ。今度落ち着いたら、一杯飲みにでも」

「はい。ぜひ」

「では、失礼します……」





 助三郎は屋敷に戻るなり、忍び二人に繋ぎをつけた。
手短にその日の出来事を話すと指示を出した。

「至急、呉服屋駒屋と薬種問屋旭屋を調べてくれ」

「勘付いたの?」

「何かある気がするんだ……」

「じゃあ、私は駒屋を。飛猿は旭屋を」

「了解」

「頼んだ」

 二人を見送り、部屋へと急ぐ彼の頭にもう一つの疑問がよぎった。
忍び二人には詮索を指示していない。

『お兄ちゃん』

 なぜお初は徳兵衛をそう呼んだのか……
 なぜ彼女は泣き出したのか……
 いったい、二人の関係はなんなのか……

 一人物思いに沈んでいると、人影が。

「今晩は真面目に部屋に居るようだな。でも、いつまで助さんなんだ?」

 格之進姿の妻が、腕組みして立っていた。
 それに対して、助三郎は着流しの町人。
早く身形を改めなければその場に不釣り合いである。

「……すぐ着替えるよ」

「新助とお孝ちゃん元気だったか?」

「あぁ。会いたがってたぞ。早苗にな」

 そう言ってはみたが、つれない返事しか返ってこなかった。

「そうか。早く着換えろ。夕餉だ」

「あぁ……」





「格之進。明日の予定は?」

 夕餉の後、日誌をつけようと硯で墨をすり始めた早苗に
助三郎は声をかけた。

「朝は御老公に挨拶に。その後、資料を借りてくる。それくらいだ」

「そうか。だったら、その後開けておいてくれるか?」

「……何か用事か?」

「あぁ。さっき、新助の家でちょっと気になることがあったんだ。
お銀と飛猿に、今調べてもらっている」

 仕事が早い夫に、嬉しそうに笑みを投げかけた。
 
「わかった。仕事が早くて何よりだ。助三郎」

 男のさわやかな笑みより、女の可愛い微笑みが見たい助三郎。

「しばらくここでの生活か……」

 寝転がると、天井を見つめてぼやいた。

「……イヤか?」

 早苗は硯を摺る手を止めた。

「そろそろ早苗の顔が見たいんだよな……」

 しかし、意地悪く切り捨てた。

「我慢しろ」

「ちぇ……」

 その晩なかなか寝付けなかった助三郎は、
先に寝てしまった相棒の顔を見ていた。

「ほんと、憎らしいくらい美男だな。お前は……」

 じっとその美しい顔眺めていたが、突然歪んだ。
悪い夢でも見てるのだろうか。

「いかないで……」

 落ち着かせるように、そっと声をかけた。

「大丈夫。俺はここに居る……」

 しかし、呼んでる相手が自分でないことに気付き、
打ちひしがれた。

「おにいちゃん…… 行かないで……」

「嘘だろ……」

 妻は夢の中で探しているのは自分ではない。
探しているのは、飛猿。

「おにいちゃん。ずっとそばにいて……」

 その言葉に恐ろしさを感じた助三郎。
余計眠れなくなってしまった。





 昨晩の嫌な不安な気持ちを洗い流すかのように、
助三郎は冷たい水で顔を洗っていた。
 しかし、目は醒めても、さっぱりしても、
気持ちまでは綺麗さっぱりとはいかなかった。
 そんな彼のそばに、お銀がやって来た。

「おはよう、助さん。なんかやなことあった?」

 その言葉に、どきりとしたが上手くやり過ごした。

「おはよう。いいや、寝付きが悪くてさ…… で、早速報告か?」

「えぇ。すこしだけね。今、大丈夫?」

「あぁ。頼む」

「あの後、徳さんは番頭さんにこっぴどく怒られた」

「気の毒に……」

「でも、旦那さんと女将さんは番頭を叱って徳さんをかばった。
そのせいか、番頭は陰で徳さんを折檻してた」

「とんでもないな…… それで、見合いは破談か?」

「いいえ。番頭は諦めてない……」

「怪しいな…… 引き続き調べてくれるか?」

「了解」

 お銀が立ち去ろうとした時、早苗が彼女に気づき声を掛けた。

「あ、お銀。おはよう!」

「おはよう。格さん。その様子じゃ、昨晩は何にも?」

「あぁ。芸者遊びした罰だ」

「……一体、どうしたら許してくれる?」

 いつになく不安げな助三郎。
その様子に気づいたお銀。

「格さん。助さんをいじめないの。可哀想よいい加減」

「だって……」

「そもそも助さんが芸者遊びした理由、分かる?」

 全てをお見通しのお銀。狼狽える助三郎。
全くわからず首を傾げる早苗。

「あなたのせいでもあるのよ。だから、助さんが全部悪いわけじゃない。
いい加減に、許してあげなさい」

 姉のようなお銀に窘められ、早苗はしぶしぶ言った。

「……助さん、許してやる。二度とするなよ」

「お銀、ありがとう!」

「頑張ってね、お二人さん」





 お銀が去り、早苗も朝餉の支度のため部屋から消えた時、
見計らったかのように飛猿が現れた。

「助さん。おはようございます」

 あまり顔を合わせたくなかったが、
 『今は仕事』と言い聞かせ。嫉妬、懐疑、恐怖……
様々な感情を隅へと追いやった。

「おう、おはよう。どうだった?」

「当たりでした。さすが助さん。
詳しくはこれから調べる必要がありますが、
間違いなく。裏がある縁談です」

 苦手な男だが、褒められたのは素直にうれしい助三郎。

「今日、御隠居のところに持っていきたい。
わかってるとこまで、聞かせてくれるか?」





 主の光圀に挨拶に伺った二人。
彼はすでに屋敷での生活に飽きていたようだった。
 すぐさま二人にこう切り出した。
 
「何か面白いことは、あったか?」

 早苗は大人しく答えた。

「某は特には…… 助三郎が何やら掴んだようで、昨晩より念入りに調べておりました」

「ほう、なんじゃな?」

「はっ。お店同士の縁組の裏に、よくないものが」

「ほう。詳しく聞かせてくれるか? 助三郎」

「はっ」

 助三郎はこれまで入手した情報を、主に説明し始めた。

 諸藩御用達の大店、呉服問屋駒屋の一人娘、お初の見合い相手は
これまた諸藩御用達の薬種問屋の次男坊、秀二郎。
 見合いを取り決めたのは、お互いの店の番頭。
 駒屋の九兵衛、旭屋の伝右衛門。

 傍から見ると、申し分のない縁談。
 しかし、まず当人同士に問題が……
 
「旭屋の次男坊は、役者のような見目のおかげか、女癖が悪く、
評判も良くありません。
 長男が店を継いでおりますが、子種がないようで……
次男を婿に出し、生まれた子どもを養子にもらおうなどと、
番頭同士がこそこそと……」

「そうか。よくあることじゃな……」

「一方、駒屋の一人娘は、毎回見合いを断わって逃げております。
もしかしたら、好いた男がいるのではないかと……」

「そうか。不幸な結婚になるの……
して、その裏にあるのは?」

 助三郎はつづけた。

「詳細は、只今、お銀と飛猿に双方の店を調べさせております。
ただ、この縁組は『御大名肝いりの縁談』と、駒屋の手代徳兵衛が申しておりました。
番頭二人の裏に、間違いなく何かあると思います」

「確かに、怪しいの……」

 助三郎は今後どうするか、主の指示を仰いだ。
これ以上、主の許可なしに勝手に動いてはいけない。

「いかがいたしましょう?」

「よい。引き続き調べなさい。しかしな、助三郎……」

「はっ」

「わしも手伝う」

 暇で仕方がない光圀。
 首を突っ込むことに決めた。
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