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「雪割草シリーズ」
翁草

〈03〉作戦

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 内密な話があると、助三郎に追い出され部屋をしぶしぶ後にした早苗。
 庭に飛猿の姿を見つけた。

「あ! 飛猿。どうした?」

 軽く会釈をすると彼は一言、

「助さんはどちらに?」

「ご老公と内密で話し中だ。もう少ししたら、来るはずだと思う」

「そうでしたか。では、その頃に出直します……」

 早苗は、その場を立ち去ろうとする彼をひき止めた。

「俺じゃダメか?」

「この件は助さんに頼まれたので……」

 にべなく断られ不満に思った彼女は、近頃感じていたことを
口にしてしまった。

「……なんでそう俺に冷たい?」

 薄笑いを浮かべた彼からは、満足のいく答えはかえってこなかった。

「気のせいですよ」

「……男に懐かれるのが嫌か?」

 その問いは無視された。
彼の目は、早苗ではなく助三郎に向いていた。

「……助さん。お疲れ様です」

「お疲れ。新しい情報か?」

「はい」

 除け者にされ、気分が悪い早苗。
精一杯の嫌味を残し、その場を後にした。

「助さん、俺は邪魔なようだから先に帰ってる」

 不機嫌な『格之進』には、触れないほうがいい。
 わかっている助三郎は、何も言わずに見送った。

「……格さん怒らせたのか?」

「いいえ……」

「そうか…… 報告を」

「はい。旭屋の番頭、侍を接待しています。主人の目の届かないところで、
次男坊と一緒に」

「そうか」

「侍の正体ですが…… 」

 彼はすぐにその名を口にしなかった。
周囲を見渡し、一礼すると助三郎に近づき、
耳元でその名を告げた。

「……川越藩大納戸役江戸詰、西田庄左衛門」

「……川越藩だと?」

 驚きを隠せないが、大声をあげることも出来ない。

 川越藩は、柳沢吉保の国。
側用人のおひざ元で、良くないことが起きているのである。

「……大手柄ですね。御老公より褒美が出るんじゃないですか?」

 滅多に褒美など出ない。
しかし、柳沢吉保と仲が悪い光圀のこと。
 有りえないとは言い切れない。

「早苗と二人で、湯治とかどうです?」

 助三郎はその提案に、はっとした。

 彼は己の嫉妬心など、とうの昔に見透かしているのでは無いのか。
しかし、今はそんなことに囚われている時ではない。

「解決してから考える。それで、やつの目的は?」

「駒屋の乗っ取りです……」

 その言葉に助三郎は驚いた。

「駒屋の番頭は、共犯じゃ無いのか?」

「共犯と見せかけて、使い捨てるようで……」

 助三郎は人の気配を感じると、話をそこまでで打ち切った。

「ありがとう。引き続きよろしく。
あと、お銀に伝えてくれるか?
俺らは旭屋のお初さんと徳さんを調べる。お銀は旭屋の番頭の調査に集中してくれって」

 飛猿は素直に従ったが、助三郎をどきりとさせることをまたもや口にした。

「……気になりますか? 二人の関係が」

 嘘を言っても、意味はない。

「あぁ……」





 部屋に戻った助三郎の目に、珍しいものが入って来た。
いつもピシッとしている『格之進』が、珍しく寝転がって天井と睨めっこしていたのだ。
覗き込んで声をかけた。

「お疲れさん。元気ないみたいだな。どうした?」

早苗は、すっと起き上がると、襟の乱れを直しながら不満げにもらした。

「俺の時、お兄ちゃんがなんかよそよそしい。それが嫌なんだ……」

 考えていたのはまたしても飛猿のことだった。
ため息混じりで、返した。

「そうか…… だったら、早苗で会えばいいじゃないか……」

「それは、お兄ちゃんに怒られるから嫌だ。お前の機嫌も悪くなるし……」

 苛立ちを覚えた助三郎は、言い放った。

「どっちか選ぶんだな。お兄ちゃんか、俺か」

 そうは言ったが、答えを聞きたくない。
飲まなければやってられない。そう考え、助三郎は腰を上げた。

「出てくる……」

「ちょっと待て!」

 慌てるその様子に、うんざりしながら言った。

「女のいる店で飲まないから」

 お叱りが続くかと思いきや、違う言葉が帰って来た。

「飲みに行くなら一緒に行く!」

「お、珍しいな……」

 ポンっと肩をたたくと、早苗は顔を伏せぼそっと言った。

「……お前の機嫌が悪くなるのを見るのが一番嫌だ」

 嬉しくなった助三郎は意気揚々と部屋を後にした。

「よし。じゃ、飲みに行こうか、格さん」





 二日後、下屋敷の一室。
助三郎はニヤニヤを抑えきれずに一言漏らした。

「可愛い……」

 久々に妻の姿を拝んだ。
しかも、それは今までに見たことのない姿。
 嬉しくて仕方がないのだった。

 しかし、当の早苗は不満だった。

「わたし人妻なんだからこんな格好ダメよ!」

 豪華な振袖。煌びやかな帯。
華やかな簪。かわいらしい化粧……
 どこからどう見ても、大店のお嬢様だった。

「若いからいいの! ちょっと地味だったかしら?」

「地味で結構です!」

 お銀も面白がって早苗を飾り立てたらしい。

 光圀はいつもと同じ『ちりめん問屋の隠居、光右衛門』
に姿を変え喜んでいた。

「いやはや、眼福じゃ……」

「受けるんじゃなかった、こんな役……」

 助三郎はニヤケを抑えながら、彼女をなだめた。

「格さんがボンボン若旦那役は嫌だって言ったんだ。
恨むなら、格さんを恨め」

 助三郎は光圀と二人でこの案を考え出した。
『格さん』を若旦那に仕立て、お見合いと称してお初に近づくという案も出したのたが、
『格さん』が却下したので、この本命の作戦を実践することになった。

「わかったわよ……」

 不相応な格好を褒めちぎられる以外に実害はないので、早苗は諦めた。

「早苗はわしの孫娘。手代の助さんを近々婿に迎えて店を継ぐという設定じゃ。
同じ年頃で同じ立場の娘が近づけば、なにかわかるかもしれんからの」

 いつも光圀は『早苗』の潜入捜査を許さなかったが、
今回は違うのであっさり許可が出た。

「お初さんと仲良くなって、見合いを逃げる理由を聞き出すんだ。
俺は徳さんを調べる」

「わかったわ」

 まじめな助三郎はそこまでだった。
再びニヤケると、光圀に向かってふざけ出した。

「ご隠居、こんなに可愛く美しいお嬢さんを頂けるなんて光栄です。
一生お店のために尽くします!」

「よいよい。すべては可愛い早苗のためじゃ」

 早苗は真っ赤になった。

「ご隠居さま! ふざけないでください!」

 すると大真面目に光圀は彼女をたしなめた。

「早苗。おじいさまじゃ」

「もう! おじいさま!」

 そう呼ばれて更に喜ぶ光圀。
ふくれっ面を眺めてまたまた喜ぶ助三郎。

「本当に可愛いの。助さん」

「はい。御隠居。お嬢様は何をしても可愛いです!」

 あまり褒められることに慣れていない早苗。
恥ずかしさをまぎらわすためには、怒る以外にしようがなかった。

「生意気よ! 助三郎!」

 次の瞬間、助三郎はその場で身悶えていた。

「へ? どうしたの? 大丈夫?」

「早苗に呼び捨てにされた…… 堪らん……」

 格之進の姿でよく呼んでいた。
 一体、それとなにが違うのか?

「……何が嬉しいの? 助三郎さま」

「あぁ…… 普通に呼んでくれた……」

 今の状態では、助三郎に何やっても喜ぶ
と言う事だけは分かった早苗だった。
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