FC2ブログ

スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←〈03〉作戦 → 〈06〉 克服
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



総もくじ 3kaku_s_L.png 雪割草シリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png 月も朧に
もくじ  3kaku_s_L.png ひとこと
もくじ  3kaku_s_L.png いろいろ
もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「雪割草シリーズ」
翁草

〈04〉お嬢様と手代

 ←〈03〉作戦 → 〈06〉 克服
 新助の家へ到着するなり、お孝は大喜びで出迎えた。。

「すっごく可愛い!」

 目を輝かせる彼女に苦笑しながらも、
仕事に頭を切り替えた。

「お孝ちゃん、お世辞はいいわ…… 手筈通り大丈夫?」

「はい。大丈夫です」

「よろしくね」





 そうしているうちに、お初が現れた。

「はじめまして。初です。助さんお久しぶりです」

「早苗です。よろしくね。お初ちゃん、徳兵衛さん。
うちの助三郎から、お初ちゃんのこと聞いてお話ししたくて」

「わたしも!」

 きゃっきゃと女の子同士の会話が始まった。
しばらくすると、助三郎が恐る恐る口をはさんだ。

「あの…… お嬢様……」

「なに?」

「私ども、仕事の途中でして…… ねぇ?」

 隣の徳兵衛に目配せした。

「はい……」

 お嬢様二人は冷めた目で手代たちを見た。

「だから?」

「その、叱られます……」

「はい。番頭さんに……」

 早苗は鼻で笑った。

「いいの。わたしが怒られないようにするから」

「そうよ、お兄…… 徳兵衛も怒られないから、良いじゃない」

「もう、二人とも、手代さんたち困ってるわよ」

 そうお孝はたしなめるが、結局はお嬢様たちの味方。
困り顔の手代たちをそっちのけに、再びおしゃべりに花を咲かせ始めた。


 新助は男たちの味方である。

「お二人とも、大変ですね…… ありゃ、相当長いですよ」

「はぁ。困ったお嬢さんだ……」

「お互い、大変ですね」





 頃合いを見計らい、光圀の御隠居の登場である。

「新助、うちの孫娘がお邪魔してませんかな?」

 新助が応対し、部屋に通した。
 
「はい。御隠居。いらっしゃいますよ」





「これ早苗、助さんを困らすんじゃありません!」

「あ、おじいさま……」

「助さんは仕事がある。早く行かせなさい」

「だって、おじいさま……」

 駄々をこねる早苗が可愛く、ニヤケそうになった光圀だったが、
ぐっとこらえ、厳しい顔をした。

「祝言まであと少し。我慢しなさい!」

「はい……」

 しおらしく言葉に従い、手代を解放した。

「助三郎、ここはもういいわ。戻って良し」

「はい。ありがとうございます! あの、お初さん、
徳さんもいいでしょうか?」

 少し不満げな様子だったが、お初も早苗に倣った。

「えぇ。戻って良し!」

 いそいそとその場を後にしようとした二人だったが、
助三郎は止められた。

「助さんは。わしと一緒に帰りますよ。
番頭さんに怒られないようにな」

「はい。では、徳さんお疲れ様です。また今度」

「はい。お先に失礼します。お嬢様、後ほどお迎えをよこしますので」

 
 徳兵衛の姿を、助三郎は気の毒そうに眺めた。
彼は番頭に叱られるに違いない。
悪事を企んでいながら、裏で利用されている番頭に。
 一刻も早く、悪事を暴かなければと決意を新たにした。

 一方で光圀はお初と話が弾んでいた。
 
「ご隠居さま。早苗さんのお婿さんって……」

 興味深げに助三郎を眺めるお初の視線に助三郎は気付いた。

「はい。この手代の助三郎です」

 光圀がそういったとたん、早苗は恥じらう素振りを見せた。
そのかわいらしい姿に、助三郎は撃沈した。


「さて、行きますよ、助さん」

 その一言ではっと我に返った助三郎。

「あ、はい!」

 早苗を残し、二人はその場を後にした。





「助三郎」

 真剣な声音で、呼びかけられた助三郎は居住まいを正した。

「はっ」

 何を言われるのかと身構えたが、

「かわいかったの……」

 拍子抜けしてしまった。

「は、はぁ……」

「この調子で、調べてくれ。柳沢の渋い顔が楽しみじゃ……」

 冷たく笑う光圀の様子に、すっと寒気がした助三郎だった。





 夕方、早苗は迎えに来た『姉や』のお銀とともに下屋敷に返って来た。
そこには飛猿がいた。

「あ、お兄ちゃん!」

 早苗は久々に彼の笑顔を見られて嬉しかった。

「お疲れさん。お初さんとはどうだった?」

「……突っ込んだ話は、もう少し時間が掛かりそう。でも、早くしないと」

 たわいもない話、お互いの軽い身の上話。
それでその日は終わっていた。
 肝心かなめの、手代の徳兵衛との関係、見合いを断る理由
それが聞き出せていない。

「そうか。またお嬢様やらないとな」

「えぇ? また?」

 早苗が不満の意を示すと、飛猿は笑って言った。

「助さんが喜ぶからいいじゃないか」

 早苗はうつむき加減。

「……また、喜ぶかな?」

「ああ。勿論」

 助三郎の不安とは余所に、
早苗の一番はやはり助三郎である。

「じゃあ、我慢する。そういえば、お兄ちゃん、今日は何調べたの?」

「旭屋の背後にいる悪の根源」

「柳沢さまに近い人なんでしょ? 気をつけてね」

「あぁ」

 飛猿は、助三郎が複雑な表情を浮かべ、こちらを見ていることに気づいた。
会話を終わらせるために、彼は動いた。

「おっと、お銀が待ってる。着替えて来い」

「じゃあ、また後でね!」





 彼女を見送るや否や、彼は助三郎の元へ向かった。

「助さん。お疲れ様です。そちらはどうでしたか?」

「おつかれ。俺の方もまだまだだ。あっちは仕事があって忙しい。
夜にでも一杯飲みに行くしか……」

「男同士は飲むのが一番ですね。……我々も一度、どうですか?」

 助三郎はその言葉に驚きつつも、探った。

「……格さんは?」

「いいえ。助さんと私とサシで。是非ご検討を。では……」

 返事を待たず彼は消えた。
入れ替わるように、格之進の姿の早苗が現れた。

「あ、お兄…… じゃなかった飛猿…… 行っちゃった……
って、なんでお前はあからさまにそういう嫌そうな顔をする?」

「お嬢様の早苗をもっと堪能したかったんだ!」

 本当は、飛猿のことばかり見ている早苗への不満だった。
しかし、そんなこと言えない彼は、そう言い繕った。

「でもいい。明後日があるからな」

「明後日?」

「ああ。うちの藩御用達の呉服問屋の離れを借りて、茶会をする。ご隠居が亭主だ」

「はぁ。またあの格好か……」

 早苗は嫌がるそぶりを見せ、助三郎の反応を見ようとした。
厄介な夫婦である。

「めちゃくちゃ可愛いからいいじゃないか。な?」

 早苗は内心嬉しく思ったが、文句を続けた。

「振袖は動きにくい。帯も重い。男の着物の方が楽だ」

「……だからそのままなのか?」

 がっかりしたその様子を見て、ほくそ笑んだ。
関連記事
スポンサーサイト



 関連カテゴリ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png 雪割草シリーズ
総もくじ 3kaku_s_L.png 雪割草シリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png 月も朧に
もくじ  3kaku_s_L.png ひとこと
もくじ  3kaku_s_L.png いろいろ
もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。
  • 【〈03〉作戦】へ
  • 【 〈06〉 克服  】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。