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月も朧に

〈14〉 おとく又平

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『傾城反魂香』「土佐将監閑居の場」の幕が開いた。

 場面は、絵師土佐将監光信とさのしょうげんみつのぶが、
帝の不興を買い謹慎している静かな屋敷。

 ここへ、百姓たちが騒がしくやってくる。

 永之助が演じる弟子の修理之助しゅりのすけ。
何の騒ぎかと彼らに尋ねる。
 すると、彼らはお屋敷の薮の中に虎が逃げ込んだと言う。
 日本に虎など居ないと修理之助は笑うが、
確かめてみると、本当に虎がいた。

 将監はこの虎を観察すると、すぐさま正体を見破り、
原因まで言い当てた。
 絵師狩野元信の描いた虎に魂が入って絵から抜け出たのだと。

 修理之助は、この虎を自分に消させてほしいと願い出て、
筆を使ってやってのけてしまう。
 将監は、彼を褒め、土佐の苗字を名乗ることを許して印可の筆(※1)を与えた。

 しばらくすると、そこへある男が女房連れでやってくる。
 それは、修理之助の兄弟子にあたる浮世又平、女房はおとく。
 又平は生まれついての吃音。
思うように話せないので、口が達者なおとくが彼の代わりに挨拶をする。


 ここも見どころである。
佐吉はじっくり亀彦のおとくと、雪之助の又平の二人の芝居を堪能した。



 さて、又平夫婦は、修理之助に土佐の苗字が許されたと知ってしまう。
又平は、ぜひ自分にもと必死に懇願する。
 しかし、何の功績もない者に許せるわけがないと拒否されてしまう。

 そこへ突然、狩野元信の弟子、雅楽之助うたのすけが、
元信の姫君が危険にさらされていると、知らせにやってくる。

 この姫を助けに行くのを任されたのは、修理之助。
 又平も一緒にと必死に弟弟子にすがる。
 しかし、修理之助は心を鬼にし、涙をのんで兄弟子を振りほどいて
姫救出に向かう。



 ここで、永之助の出番は終わり。
袖で観ていた佐吉の横に、化粧も落とさずやってきた。

「……おつかれさん」

「……お疲れ様です。……あとで、感想教えてください」

「……わかった」

 ここからがこの芝居の見どころである。
二人は一切の会話をやめ、見入った。



 弟弟子に先を越され、師匠にもきつく叱られてしまった又平。
もはや望みはないと、死ぬ覚悟を決める。

 夫をかいがいしく世話をするおとく。
夫の手に触れ、夫の障害を嘆く。

『手も二本、指も十本ありながら……』

 客席にすすり泣きが聞こえ始めた。

『なぜ吃りには、生まれさしゃんしたぞいなぁ……』

 佐吉も、すするのだけは我慢しながら見ていたが、
目が曇った。


 おとくは「この世のなごりに」と、庭にあった手水鉢にの自画像を描くよう夫に勧める。
 又平は一世一代の絵として、精魂こめて絵を描く。


 ……この一世一代の絵が、彼の運命を変えるのであった。


 書き終えて、精根尽きた又平。いそいそと、自害の準備を始めるが、
おとくは、別れの水盃を懇願する。

 そして、水を手水鉢から汲もうとするが、その手水鉢の異変に気づく。
 夫が描いたところとは真反対側の面に、絵があるのだ。
 なんと、絵が石の裏側に抜けたのだった。

 必死にこの奇跡を夫に伝え、何度も何度も二人で確認する。
そして、又平は驚き大喜び。

「かかぁ、抜けた!」

 師匠の将監は、絵を見て又平をほめたたえると、土佐の苗字を許した。
印可の筆、新しい着物、大小ももらえ、姫君救出も命じてもらえた。

 出立に際し、又平はおとくの鼓に合わせ、祝いの舞いを舞う。
敵に名乗るとき、吃りでは…… と不安がる将監に、
節があれば、よどみなくしゃべることが出来るのだとおとくは説明し、笑いを誘う。
こうして、意気揚々と、姫救出に向かうのであった。



「……良かったですね」

「ほんまに。ほんまにええなぁ……」

「お客様の涙も、笑いも誘える芝居。したいです……」

「せやな……」

 二人で感慨深げにしていると、背後からどなり声が。
 雪之助だった。

「こんなところでいちゃいちゃしてんじゃねぇ。準備の邪魔になるぞ」

 怒鳴られたものの、彼は笑っていた。
佐吉はすぐさま彼に礼を述べた。

「お疲れ様です。大変勉強になりました」

「ならよかった。次は一緒に芝居出来るといいな」

「はい! ありがとうございます!」

 彼を見送ると、永之助は邪魔にならないところに
佐吉を引っ張っていき、せがんだ。

「私の芝居の感想、教えてください!」

「その前に化粧落としてきぃや」

「えー 先に聞かせてください」

「なんでや?」

「なんででも!」

 駄々をこねる永之助の可愛さに佐吉は負けた。
それは、あくまでも弟としての可愛さだった。

「またいちゃいちゃしてんのか!? お前らは!」

 次の芝居の準備を終えた雪之助に、またしても怒鳴られた。
二人は笑いながらその場から逃げ出した。

※1 印可の筆
師がその道に熟達した弟子に与える許可
いわゆる“お墨付き”の証の筆
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