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「雪割草シリーズ」
凌霄花

 〈02〉 偽装

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その日、お銀は京の山科にいた。

「……今日は収穫少ないかしら」

 今日は赤穂の浪人たちの会議。
それは集まった人数を観たお銀の感想だった。
 少ない人数だが、会議は会議。
 彼女は息を潜めてその行方を見守ることにした。

 会議が始まった。
 即座に、中村勘助が口を開いた。

「御家老、今すぐ討ち入るべきです!」

 彼に続いて、潮田又之丞も声を上げた。

「そうです! 吉良が隠居した今、いつ上杉の屋敷に隠れ住むか、
分かったものではありませぬ!」

「上杉屋敷ならまだまし。出羽に引っ込まれたらどうするのですか!」

 しかし、内蔵助は目を瞑り、黙って聞くばかり。

「ご家老。江戸表にいる同志の一部は気が急いて、
単騎討ち入りを決行しようとするものもおります」

「ご家老!」

「これ、あまり声を荒げるな。誰に聞かれてるかわかったもんじゃない……」

 年長の吉田忠左衛門が宥め、どうにか落ち着かせた。
 皆は内蔵助の言葉を待った。
 しかし、それは期待外れのものだった。

「今日は皆、気が立っておる。旅の疲れもあるに違いない。
 続きは明日にして、今日は飲みに行こう」

 お銀はため息をついた。

「続きは明日かしら……」

 そういいながらも、お銀は刀に手をやった。
 自分以外の忍びの気配を感じていたからだ。
 当然ではあるが、仲間ではない。

 当初こそ様々な物好き殿様が情報収集をしていた。
 しかし、何も起こらない。故にどんどん減っていった。
 今残っているのは、公儀隠密、上杉、吉良……
 即ち皆敵である。

 攻撃してきた忍びと戦い、難なくとどめを刺した。

「さぁ、続きは明日……」

 何事もなかったかのように、彼女はその場を後にした。


 次の日も会議に進展はなかった。
 そして、その次の日。

「ご家老、いい加減に考えをお聞かせください」

「そうです! ご家老!」

 その日も腕を組み、目を瞑って何も言わない内蔵助だったが、
 いつもとは若干違う雰囲気にお銀は気づいていた。

 内蔵助は、ゆっくり目を開くと言った。

「殿の弟君大学様の御赦免と、赤穂藩の再興を第一に考えたい」

「え!?」

「なんですと!?」

「討ち入りはどうされるのですか!?」

 皆の問いかけに応えず、彼は懐から二通文を出し、手渡した。

「こちらを遠林寺の祐海殿に送ってもらいたい。
そしてこちらは、皆で読んだ後に江戸の同志に渡してほしい」

「承知」

 吉田忠左衛門がその文を素直に受け取った。

「では、これにて」

「ご家老!? どこへ行かれるのですか!」

 不満が巻き起こるその場から、内蔵助は悠々と去っていった。
 残された者のうち、過激派からは不満の言葉があふれた。

「とうとう大石様まで腑抜けになられたか……」

「これはもう、江戸に取って返し、安兵衛殿たちと討ち入るしかない!」

 元はお家再興を目指していたはずの中村勘助と、潮田又之丞。
 安兵衛をはじめとする江戸の急進派を抑えるはずが、
感化され過激派になってしまっていた。

 彼らを吉田忠左衛門がまぁまぁと宥める。

「そうわめき散らすでない。まずはこの文を読もうではないか」

「読みたくもないわ!」

 近松勘六は、内蔵助の振る舞いに少々困惑していたものの、
彼らの様子に苦笑しながら、文を読み始めた。

「……そうであったか」

 顔色がさっと変わり、感慨深げにそう呟きながら、
目頭を押さえる近松。
 その様子を見た潮田又之丞は、文を覗き込んだ。

「どうされました? 失望しましたか?」

「百聞は一見に如かず、これを読まれよ……」

「え?」

 読み進めていくうちに、彼の血相が変わった。
 そしてしばらくの後、深々と頭を下げた。

「ご家老、申し訳ございませんでした……」

 一人、また一人と回し読んで行った。
 いつしかその場に不満を漏らす者はいなくなっていた。

 お銀は目を凝らし、文の中身を盗み見た。
 そして必要な情報を掴み取った。

「そういうことね……」

 その重要な情報を江戸の弥七に伝えるため、彼女はその場を後にした。





「お帰りなさいませ」

 夕方、仕事から戻った早苗はお富の出迎えを受けていた。
刀を渡して労った。

「ただいま。いつもありがとう」

 しかし、すぐに元の姿に戻り、
すぐにお富のすぐ横に腰を下ろした。

「お嬢さま、お疲れでしょう。わたしがやると毎回言ってるではないですか」

「お富にはご飯作ってもらって、掃除も洗濯も全部やってもらってるんだもの。
これくらいやるわ」

「ただいま」

助三郎が帰って来た。

「お帰りなさいませ、助三郎さま」

「ただいま、早苗」

 これがしたいがため、早苗は助三郎より早く職場を後にしていた。
うれしそうな助三郎の顔を眺めるのが、幸せな早苗だった。

「お風呂にしますか? 夕餉にしますか?」





 その夜も二人はいちゃついていた。

「もう! イヤ!」

 腕の中から逃れて駆け出す早苗を助三郎は追いかけた。

「やじゃないくせに」

 難なく壁際に追い詰めた。

「イヤなものはイヤなの!」

 そうは言いながら、まったくイヤそうではない早苗。
 壁に手をつき、彼女の顔を覗き込んだ。

「早苗……」

 頬をほんのり染めた妻の顔に近づけた
しかし、次の瞬間目の前が真っ暗になった。


「あ、えっと、弥七か?」

「格さん、夜半に申し訳ありません……」

「こっちこそすまん、気を使わせて……」

「それより、格さん。助さんの顔から手ぇ離してくだせぇ、苦しそうだ……」

 気配を感じたとたん、近づいてきた夫の顔を手で阻止していた。
 しかも、男の手で……

「へ? あ、すまん! 助さん、大丈夫か?」

「指が目に入らなかっただけいい……」

 と言いながらも不服そうな助三郎に、早苗は必至で謝った。

「ごめん。ほんとにごめん……」

 助三郎は無視して、弥七に向いた。
 すでに仕事の顔だった。

「報告か?」

「へぃ」

 弥七はお銀からの情報を簡潔明瞭に報告した。

「ありがとう。まだまだこれからだな……」

 前進したが、まだ行き着く先は見えない。
ため息をつきながらも、助三郎は弥七を労った。

「お銀は引き続き京で見張りを。あっしは、こっちの急進派と吉良方を見張ります」

「ありがとう。よろしく頼む」

「では、お邪魔致しました……」

 弥七が去り、また二人っきりに。

「今から報告書書くか?」

 素っ気なく助三郎は早苗に声を掛けた。

「いや、帳面に書いておくだけにする。報告書は明日にする。
先に寝ててくれていいぞ……」

「ああ」

 布団を敷き、奥深くに潜ってしまった夫を脇目に、
早苗は机に向かって記録を残した。

「終わった……」

 大きく伸びをしようとした早苗だったが、
手を伸ばせなかった。

「 ……疲れてるか?」

 背後から助三郎が腕を回していた。

「へ? えっ……」

「……調子が悪くて勝手に変わったのか、気配感じて変わったのか、どっちだ?」

 すぐに早苗に戻った。

「気配感じたから…… ごめんなさい…… 迷惑かけて……」

 藩には年始早々、佐々木助三郎の妻は江戸藩邸で夫と同居と届け出をした。
表向きには夫婦の屋敷に格之進が居候する形。
 しかし、妻がいながら子を作らず、義理の弟に手を出しているなどと勘違いされたら、
家名に傷が付く。

「迷惑なんかじゃ無い。謝らなくてもいい。ちょっと痛かったけどな」

「うん……」

「よし。じゃあ、さっきの仕返しだ!」

助三郎は早苗を布団に押し倒した。

「いや!」
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