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「雪割草シリーズ」
翁草

〈07〉作戦会議

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その日の朝は、珍しく助三郎の方が早く起き、身支度を終えていた。
そして、すでに朝餉の支度が。
しかし、三人分が用意されていた。

「あれ? どうしたこれ?」

その問いに、満足げに助三郎が答えた。

「飛猿と一緒に作戦会議がてら、な」

気がつくと、そこには飛猿がいた。

「おはようございます」

いつ以来かわからない飛猿との食事。
嬉しくなった早苗は笑みを浮かべた。

「おはよう。一緒に朝餉なんて久しぶりだな!」

そう言いながらも、そっと夫の顔色を伺った。
しかし彼は嫉妬も恐れも無縁の顔をしていた。

三人は朝餉を取りながら、作戦会議を始めた。

「お孝によると、三日後に例の相手と改めて見合いの予定があるらしい
今度も絶対に逃げてやるって頑張ってるみたいだ」

情報をまず早苗が報告した。
続いては、助三郎。

「徳さんは、お初さんに逃げられないように、どう阻止するか必死になってる。
また番頭に怒られるからな。
それと、徳さん自身もじきに見合いがあるらしい。
受けて早々に婿入り先を決めたいようだ。
……お初さん諦めるために」

新助から得た情報だった。

「どうしたもんか…… 悪いやつ懲らしめて、お初ちゃんと徳兵衛さんくっつけるには……」

「黒幕が表に出てくれば、一発で御老公が収められるんだが…… 飛猿、動きはどうだ?」

二人の期待に答え、飛猿は最新の情報を報告し始めた。

「ご期待通り、いよいよ表に出てきますよ。
今度のお初さんの見合いで、強引に祝言まで持っていくつもりです」

「まさか……」

早苗の顔色が変わったことに男二人は気づいた。

「はい。茶屋に連れ込んで仕舞えばこっちのもの……」

言った途端、早苗は激怒した。

「ありえん! 絶対に許せん!」

色々嫌な経験もしてきた早苗。夫の助三郎は彼女を宥めた。

「……早苗、落ち着け」

しかし、飛猿は違った。

「格さん、その怒りをそのまま悪いやつにぶつけるんです。いいですね?」

「わかった……」

妻が落ち着き、同僚に戻ったところで、助三郎は話を元に戻した。

「その既成事実を作ろうとする場を、俺らで抑える。だな?」

「はい。お初さんと徳兵衛さんのためにちょっとばかし工夫しましょう。
本番はその後に」

「ほう。面白くなってきた。で? 次は?」

乗り気の助三郎。一方の飛猿は顔色を一切変えず、報告を続けた。

「祝言を上げるためと、茶屋の近くに店が抑えられています。
そこには、親玉がやって来ます……」

「そこで全員懲らしめる。だな?」

早苗もやる気十分。

「そういうことです」

「色々準備が必要だな」

何をどうしようと考え始めた早苗を他所に、助三郎は違うことを考えていた。

「……早苗の扮装はもうおしまいか?」

「いいえ。必要ですね」

「よし! 早苗お嬢様にまた逢える!」

それを聞いた途端さらにやる気を漲らせる助三郎を、
早苗が窘めた。

「何喜んでる、仕事だぞ」

「……はいはい、わかってますよ。格之進殿。
でも、手代の助三郎と早苗お嬢様で、お初徳兵衛の橋渡しをしないといけませんよ」

半ばふざけている彼に、呆れながらも答えた。

「わかってる。ちゃんと考える」

しかしすでに彼は仕事の顔に変わっていた。
驚きながらも、見惚れる早苗。

「飛猿。御老公にも後ほどこの事、報告を」

「はい」





三人は庭に出た。

「よし、手合せするか」

助三郎は木刀を持ち出し、二、三度素振りをした。

「あ、いいな。俺もやりたい」

羨ましがる早苗を横目に、木刀の先を飛猿に向けた。

「俺が先。格さんは審判だ。飛猿、手加減は一切無しだぞ!」

「はい」

木刀と素手の戦い。
凄まじい剣を繰り出す助三郎だったが、飛猿は見事に交わしていった。
息を呑み、見つめる早苗の前で、助三郎は負けた。

「飛猿、強いなやっぱり!」

二人に水と手ぬぐいを差し出しながら、早苗は飛猿の腕前に感心し、
夫が久しぶりに敗北したことにも驚いていた。

「助さん、いつ以来だ? 負けたの」

助三郎はムッとした。
しかし、嫉妬ではない。単純に、悔しかったから。
国で一番という自負があるのに、負けたから。
鍛錬をもっと真面目にしようと、決意し直していた。

「よし、次は俺だ!」

待ってましたと言わんばかりに早苗は庭へ降りた。

「助さんと同様、一切の手加減は無用だ。いいな?」

「はい。遠慮なく行かせてもらいます」

二人の素手での手合わせが始まった。

「すごいな……」

助三郎は二人の闘いに感嘆の声を漏らした。

実践を積み重ねている故に、もはや水戸藩内で柔術の腕で
「格之進」に敵う者はいなかった。
しかし、相手は忍である。真剣な命のやり取りをしている。強かった。
早苗は必死に飛猿をかわしながら、果敢に挑んでいった。
しかし彼は攻撃をほぼ余裕でかわした末に、首筋に手刀を当てた。

助三郎が、采配を振った。

「飛猿の勝ち…… お前も久しぶりに負けたな」

実戦での敗北は怪我、酷ければ死を意味する。
負け知らずだった早苗は、悔しさを味わっていた。

「ありがとうございました」

頭を下げる飛猿に向かい、悔しさを隠さず、早苗は教えを請うた。

「お兄ちゃん、教えてくれ。どこがダメだ?」

彼はその願いにすぐには答えなかった。

「そうですね…… 助さんも、いいですか?」

「え? ああ……」

「お二人とも、いかに相手を傷つけないかを考えすぎです。
骨の一本や二本、折れたって構わねぇ!ってな感じでやっていい」

少々過激な助言に驚く二人。

「相手は悪い奴です。どうせ打ち首や切腹です。腕や足、折れても何も変わりません。
痛めつけられた町人、百姓の恨み、無念、怒りをお二人が代わりにぶつけるんです」

神妙に聞く二人に、彼はさらに付け加えた。

「しかし、感情任せもダメです。感情と理性をうまく制御する。これが肝心です。
腕はお二人とも確かです。問題ありません」

その言葉を二人は神妙に受け取り、気持ちを新たにしていた。

気持ちのいい風がさっと吹き抜けると、飛猿が切り出した。

「では、そろそろ失礼します。仕事がありますんで」

「お、そうだな。俺らもやることが山積みだ」

「次のお初ちゃんの見合いの日までに、段取りを決めよう。お銀にもつなぎを頼む」

「はい。では……」

三人は別れ、それぞれの仕事に取りかかった。
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