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「雪割草シリーズ」
凌霄花

 〈04〉 手助け

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ある朝、早苗と助三郎は職場の総責任者である上司に声を掛けられた。

「話があるから、仕事終わりに残ってくれ」

二人は返事をした後、その日の業務に励んだ。

夕方仕事が終わり皆が帰った後、二人は上司に茶室で待つようにと
指示された。

待ち合わせの場所に向かいながら、早苗は不安な気持ちを露わにした。

「……何の用事かな?」

「ん? なんか気になるのか?」

早苗は歩みを止めた。

「なんか嫌な予感がするんだ」

それを助三郎は一笑に付した。

「気にしすぎだ。単に俺らのもう一方の仕事のことだろう」

「そうかな?」

「そうだ。早く終えて早く帰ろう」

能天気な夫に少し不安が和らいだ。

「そういえば今夜はお富が居ないんだった。食べて帰ろうか」

乗り気な助三郎は、腕を組みながら考えた。

「いいな。何にしようかな…… あ、でも酒は抜きだ」

父親になる自覚が出てきた夫に嬉しくなった早苗。
しかし、まだ懐妊の気配すらない自分に、若干の申し訳なさを感じながらも
素直に感謝の意を示した。

「わかってる。……ありがとう、助さん」





茶室で二人は上司を待った。
すぐ現れた彼は、二人に茶を振る舞った。
そして、突然早苗に頭を下げた。

「渥美、本当に申し訳なかった……」

「あの、何を謝られているのですか?」

「いや、正しくは渥美ではなく、早苗殿に謝りたい」

早苗の嫌な予感が当たった。
己の正体の露見である。
顔色が変わった助三郎を目で制し、焦りを押し隠し
誤魔化しに努めた。

「何かはわかりませぬが、姉に代わって……」

「隠さなくていい。早苗殿……」

その言葉を聞いた助三郎は天を仰ぎ、早苗は固まった。

「大丈夫だ。後藤から全て聞いた。もちろん誰にも言わん。責めもしない。
第一、渥美を失うのは水戸藩にとってはとんでもない痛手だ。
それに、早苗殿に何かあって佐々木が使い物にならなくなるのはさらに怖い」

自分たちは必要とされている。嬉しい言葉だった。

「勿体無いお言葉、ありがとうございます」

落ち着いた二人を確認すると、彼は話を進めた。

「まずは謝りたい。本当の姿でお願いできるか?」

早苗は国許の後藤を信じ、平居を信じ、夫を信じ、目の前の上司を信じ、
変り身を解いた。

「……この姿では初めてお目にかかります。佐々木の妻、早苗と申します」

「ありがとう。改めて、申し訳無かった……」

「あの、ですから、なにを……」

「知らぬとは言え、渥美に妻を娶り直せと言ったこと、
あの偽物の女を佐々木の妻だと信じ、
皆で早苗殿の気持ちも考えず傷つけたことだ」

そんなこともあったなと、早苗は思い出した。
しかし、そんな些細なことをしっかり覚えており、
謝ってくれる上司に驚いた。

「ありがとうございます」

助三郎は申し訳なさそうに口を挟んだ。

「あの、それだけではありませんよね? 今日我々を留め置いたのは」

「そうだ、大事な話がある。渥美の働き方についてだが、
全て承知済みだ。心配しなくて良い」

早苗以上にほっとしている助三郎は安堵の表情。

「ありがとうございます」

「私の権限で、出仕は今までの半分にし、残りは役宅での作業とする。
正式な書類等は渥美の筆跡での作成が必須だが、それ以外は早苗殿の物で構わない」

寛大な処置に早苗は驚いた。
役宅で仕事ができる。


「兆しが見えたら即、私に言うように。申し訳無いが、その気配は?」

「ございません……」

「そうか。佐々木、後でお前だけ少し残れ。いいな?」

責めるような表情を向けられ、助三郎はギョッとした。

「え……」

早苗には意外な提案を申し出た。

「早苗殿、恥ずかしながら我が家は今年十五になる娘を筆頭に五人の子がおる。
妻が相談に乗るといって聞かないので、一度会ってやってもらえないか?」

日中はほぼ毎日出仕している早苗にとって、
周りの役宅に住んでいる奥様たちとの交流は皆無に等しかった。

「ありがとうございます。ぜひ」

ありがたく受け取ると、男の姿に再び変わった。

「よろしく頼むぞ、渥美。さてと、佐々木」

あからさまに嫌な顔をして助三郎は逃げようとした。

「あの、渥美と夕餉に行くのですが……」

「すぐ終わる。渥美は下がってよし」

一礼して、その場を辞した。

「頑張れよ、助さん」


何か叱られるのだろうと身構えた助三郎だが、
上司は怒りはしなかった。

「医者に行ったことは?」

「いえ……」

「一度二人で行ったほうがいい。紹介しておく」

「産婆のあては?」

「下女が、産婆の資格を持っております。一任しようかと」

「そうか。私の家内も手伝える。あてにしてくれ」

「ありがとうございます……」

「さて、夫婦団欒に水を差してはいけない。下がってよし。明日も仕事頼むぞ」

茶室を後にした助三郎は


「待たせたな。さ、帰ろう!」

「大丈夫か?」

「あぁ。さてと、飯だ飯!」
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